はやぶさラボ

地球科学の若手研究者のプライベート

地球科学の研究者になってよかったこと

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地球科学の研究者になってよかったことはたくさんある。

 

その一つは地下探検。普通は行けないような地下の世界を見ることができることだ。

 

写真はドイツの古い古い鉱山の坑道内。去年の夏の研究者向け巡検で訪れた鉱山だ。確か16世紀から20世紀中ごろまでの長い間採掘が行われた鉱山だったと思う。

 

この鉱山は観光坑道化されていて行けば誰でも入れるが、わざわざドイツのド田舎まで行って坑道見学するなんてそうそうできない。

 

さらに、現地の研究者の詳しい解説付きだ。研究者同士なら普段は入れないところまで見せてくれるし、より深い話もできる。岩石試料も採らせてくれる。

 

私たちが普段(?)目にする鉱石や美しい鉱物の結晶がどんなふうに出てくるのかを見るのはたまらない、というのはマニアな方々にしかわからないと思うが、それとは別にたまらないのが、廃墟的なおもしろさ。

 

百年以上そのままのトロッコの線路。打ち捨てられた錆だらけのトロッコや重機。崩れるにまかせられた事務所や階段。先の見えない長い坑道をぼんやりと照らす粗末な明かり。

 

本当にたまらない。廃墟好きじゃなくてもなんかわかってもらえるはず。

リアルラピュタである。天空の城ラピュタの前半に登場する鉱山そのまんまだ。

 

となれば、明かりを全消しして天井を見て「わあ!」と言ってみたいものであるが、それはやめておいたほうがいい。完全な暗闇で何が起こるかわからない。地下の閉鎖空間の暗闇は本当に怖い。

 

坑道内で想像する。かつてハンマーとツルハシとタガネだけで掘っていた坑夫たちのことを。今より設備も貧弱だっただろうから、落盤や闇への恐怖は想像を絶する。しかし、高品位な鉱脈を発見し、美しい鉱石を手にした時の感動はそれに反比例して大きなものだったに違いない。

 

私たちが普段入る坑道は、安全性の確認された整備された坑道だ。

それでも、坑道を出るとなんだか安心する。

地上の光と空気は、本当に安心感を与えてくれる。

坑道を出ると、地下はやはり人のいるべき場所ではないと感じる。

同時に、人の住む世界、人の知る世界は狭いんだなあとも感じてしまう。

 

人類は地球上のあらゆるところに進出したけれど、地球そのもののことはまだほとんど知らないのだ。