はやぶさラボ

地球科学の若手研究者のプライベート

研究者はパフォーマーだ!

研究者って何してるの?
 
これはよく聞かれる質問だが、それが「日々の仕事として」ということなら、実験・分析して結果をまとめて考察して論文を書く、または学生や一般の人に講義をする。
ということでいいだろう。
 
でも、研究職とは遠いところにいる人にとって、これは求められた答えじゃないはず。
もっとこう、目的とか、意義とか、そんなところなんじゃないか?
 
それなら、
人類の知らない新しい知識を発見して世に広め、それを通じて社会貢献をすること。
ありきたりな感じだが、こういうことだろうか。
 
しかしそれもなんか違う。いや、人類・社会に貢献したいというのはそうなんだが、そんな曖昧な言葉でまとめたくない。
 
そもそも社会貢献とはなんだろう?
新技術につながる発見をして便利で快適な世の中にすること?地震予測を可能にする発見をして安心な世の中にすること?そういった実社会に役立つ発見をすること?
 
いやいや実社会などと言ってしまうと、例えば、宇宙の遥か彼方の人類が辿り着けないような遠い星に生命がいることがわかりました、って話があったとしても、それは実社会に役に立ちますか?それでどうなるの?役に立たないじゃん。
となってしまわないだろうか?そうなってしまったら、研究者としてちょっと悲しい。
 
思うに、研究することの根本的な目的はそんなに難しい言葉で説明するようなことじゃない。
人に「すごい!」「楽しい!」「わくわくする!」と思ってもらうことだと思う。
 
社会貢献とは、突き詰めれば人が今よりも安心だ、快適だ、楽しい、嬉しいと思えるようになることをすることなんじゃないだろうか。
 
それなら、研究することによって、人にすごい!楽しい!と思ってもらえたら、それはダイレクトに社会貢献したことになるはずだ。
 
上の例でもそう、宇宙の彼方に自分たちとは違う生命がいることを知ったら、実社会には何ら影響はなくても、見上げる夜空はそれまでとは違ったものに見えるだろう。自分だったら、夜空を見上げながら、すごいなぁ、見てみたいなぁ、ととってもわくわくした気持ちになると思う。知るだけで豊かな気持ちになれる。
 
そういうことで、研究者はサッカー選手や俳優、音楽家や画家と同じ、パフォーマーなんだと思う。知識で魅せるパフォーマーだ。
 
実社会に役立てることなどは、付随するものに過ぎない。人の気持ちを満足させ、高ぶらせてこそだ。
 
自分が楽しい、面白い、すごいと思う新しい知識を人に伝えて、人が豊かな気持ちになれば、みんなうれしいし自分もうれしい。
 
だから研究者は、自分のためにも人のためにも、知識の探求だけではなく、むしろそれ以上に、研究の楽しさ、面白さ、すごさを伝える努力をすべきだと思う。
 
とはいっても、研究者を続けていく上で、いいポストに就き、安定した収入を得るために、楽しくない事務的に研究をせざるを得ないこともあるかもしれない。それでも、今自分が向き合っていることは何がすごいのか、おもしろいのかは常に意識していきたいと思う。何より、そうしないと自分が楽しくない!